2025年3月31日(月) 汽車土瓶

旅行や出張で電車を利用する際、駅弁を楽しみにしている人は多いでしょう。

そのお供に欠かせないお茶は、現在では缶やペットボトルが主流ですが、1950年代までは陶器製の「汽車土瓶(きしゃどびん)」で飲まれていました。

汽車土瓶が初めて販売されたのは1889年のことで、日本で最初に駅弁が誕生した四年後のことです。

諸説ありますが、静岡駅の駅弁屋が、素朴な風合いで知られる信楽焼(しがらきやき)の土瓶に静岡茶を入れて売ったのが始まりであると言われています。

その後、益子焼や瀬戸焼、美濃焼、有田焼など、窯業(ようぎょう)が盛んな地域でも大量に作られるようになり、多種多様な土瓶が誕生し、多くの人に親しまれました。

汽車土瓶は、使用後に砕いて土に戻していたため、「使い捨て容器」の先駆けとも言われていました。土瓶は素材を自然に還すことのできる優れた商品ですが、重くて割れやすいため、次第に姿を消していきました。

それでも、旅に彩りを与えた先駆的な商品であったことは間違いないでしょう。

今日の心がけ◆ 身近な物の歴史を知りましょう