2025年5月29日(木) しなの木の布
信濃国(現長野県)の名前の由来は諸説ありますが、「しな布が多くとれた国」を意味するとの説があります。「しな布」とは、しなの木から作られた織物です。
しなの木の「しな」は、「結ぶ」「縛る」「括(くく)る」という意味のアイヌ語が語源であるとされています。「しな布」は日本最古の織物の一つとされ、縄文時代から利用されていました。通気性、耐水性に優れ、丈夫で風合いが良い点が特徴です。
しかし、木の皮を剥ぐことから始まる布作りは手作業で行なわれ、約1年を要します。樹皮から繊維を取り出し、織り上げるまで非常に手間暇がかかるため、化学繊維の登場や利便性を求める時代の流れから衰退していきました。
日本各地で織られていた「しな布」も、今では山形と新潟の県境の3つの村だけで生産されていますが、後継者不足から、その伝統が途絶えようとしています。効率も大切ですが、手間暇をかけることで得られる良さや味があります。それはもの作りだけでなく、人を育てることにも通じるでしょう。
人材育成でも手間暇を惜しまず、時間と労力、真心を投じたいものです。
今日の心がけ◆ 必要なことに時間を投じましょう